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KiKのズンダレ巴里日記
パリからあなたにお届けする、とっておきのくだらない話
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舞台 L'affrontement 鑑賞
今週はリヨンから知人が遊びに来ていて、昨日は一緒にリヴゴーシュ劇場へ L'affrontement というお芝居を見に行きました。
タイトルを日本語にすると「対決」。アル中気味のベテラン神父と若い神学生、カトリック教会の制度や信仰について全く異なる考えを持つ二人の対話劇です。こう書くといかにも硬そうな内容を想像しますし、ポスターもこんな感じなので

シリアスな話かと思っていたのですが、実際はコミカルなシーンがふんだんに取り入れられていて、KiK も結構笑いました。
それでも、根底にはカトリック教会への鋭い批判が流れていて、そのバランスが絶妙なのです。
「神」に仕えたい神学生と、いつの間にか「教会」に仕えるようになった神父の対決は、キリスト教に詳しくないKiKも充分に楽しめる内容でした。
そして父になる&The lunch box
相も変わらずダラダラと年末年始を過ごしているKiKですが、こんな機会なので以前から見たかった映画を二本たてつづけに見てきました。

まずは日本でもヒットしている、「そして父になる」。フランスでの評判も上々で、日本人としては嬉しい限りです。KiK個人としては、「カーネーション」以来すっかりファンになった尾野真千子さんの演技を堪能しました。真木よう子さんも、出番は少ないけれどしっかり見せてくれて、彼女の実力を再確認。この二人は本当に上手い!

家庭のためにキャリアを捨て、子育て一筋だった母親が、目の前に突然現れた試練と対峙し、おそらく初めて夫に険しい顔を向ける、そんな尾野さんの抑えた演技が印象的です。電車の中で実の子と二人きりでいるシーンの美しさは忘れられない。

真木よう子さん演じる母親は、少しだらしない夫に代わって一家を支える、現代版肝っ玉母さんという感じがよく出ていましたね。もう一方の家族から来た実の子供に「最初は怖かったけど、優しかった」というようなセリフを言われるところがあって、妙に納得。

もう一本は、インドのムンバイを舞台にした The lunch box という、これまた佳作。
インド映画とはいえ、フランスとドイツが制作に参加しているので、いわゆるボリウッド映画とは全く趣が異なります。

簡単にストーリーを説明しましょう。ある一家の主婦が、毎日夫の職場に手作りのお弁当を届けさせている (アチラでは、そんな弁当届け屋とも言うべき配達業がちゃんと確立されていて、その描写も興味深い)のだが、ある日間違ってお弁当が見も知らぬ人のところへ届けられてしまい、それがきっかけで、二人の間に弁当箱の中に手紙を入れた文通が始まる。そのやりとりを通じ、二人はお互いの悩みや昔の思い出を打ち明けるほど心を交わしてゆくのだが...

映画の最初の方は、ややリズムが緩慢ですが、次第にストーリーに引き込まれる、丁寧な作りです。欧米の映画だと、登場人物が泣きわめいたりするような場面でも、この映画では静かに、サラッとした描写で済ませ、かといってシッカリとエモーションに溢れるシーンに仕上がっているところがニクイ。

日本で公開されるかどうかはわかりませんが、もし機会があれば、絶対に見て損はないと思いますヨ!
無重力
最近巷で話題の映画「ゼロ・グラビティ」を見に行ってきました。
とにかくあっちこっちで評判が良いので、これでズッコケだったら許さんぞ、と変に身構えて行ったわけですが...

映画でこんなにハラハラしたのは久しぶりですよ。爪の先まで文系のKiKは、どうもSF映画が苦手でして、何やワケわからんと敬遠しがちなんです。この映画にもワケわからんところは(KiKにとって)山ほどあったのですが、それを差し引いても余りある面白さで、大満足。

登場人物が二人だけ、時間が一時間半という潔さも良い。まるで舞台を見ているような緊張感がありました。

サンドラブロックが時々片桐はいりさんのように見えたのはKiKだけでしょうか。とくに化粧ッ気の無い役立ったので、余計にそう見えたのかも。

ジョージクルー二ーは相変わらずジョージクルー二ーを演じてます。ネスプレッソのCMが途中で入ったのかと思いました。別にけなしているわけではないんですけど... あのCMも映画と同じくらい気合を入れてやっているってことよね、と自らに言い聞かせてます。

評論家の絶賛も満更大げさではないな、と納得したKiKでありました。
舞台 The Old Woman 鑑賞
知り合いがチケットを譲ってくれたので、今夜はパリ市劇場 Theatre de la ville に、The Old Woman という芝居を見に行くことになりました。

とにかく貰えるものは遠慮なく、という意地汚いKiKは、なんの予備知識も持っておらず、今朝ネットで調べたら...
演出 ロバート・ウィルソン
出演 ミハイル・バリシニコフ、ウィレム・デフォー
って、超豪華!

ロバート・ウィルソンは、前衛舞台演出家として欧米ではわりと有名で、KiKはこの人の「蝶々夫人」を数年前にバスチーユのオペラ座で見たことがあります。舞台セットはKiKのキライなミニマリズム調で「あーまたか」と興ざめでしたが、照明の使い方が(特にラスト)素晴らしかったのを覚えています。和服を大胆にアレンジした衣裳も良かった。やたらと日本風にこだわるあまり変ちくりんな演出になりがちな「蝶々夫人」、日本人はどこか苦笑しながら距離を置いて見るものという印象が強かったのですが、ここまでデフォルメされるともうアッパレで、逆に日本人としてはすんなりとドラマの世界に入っていける演出でした。

バリシニコフは言わずとしれたトップダンサー。今日の芝居でも彼の踊りが見れるといいなーと思うけれど、プログラムを見るとどうもその可能性は低そう。ザンネン。

KiKが初めてウィレム・デフォーを見たのは、30年近く前の「ストリート・オブ・ファイヤー」という映画です。当時は無名に近く、キモイ爬虫類系で顔色も悪くていかにも不健康そうという印象しかありませんでした。KiKはむしろ主演のマイケル・パレに胸をときめかせていて、相手役のダイアン・レインになりきりながらこの映画を見たものです。デフォーはその後スター街道を進み、パレはすっかり地味になってしまいました。男前だったのに、惜しい!

さて、もうすぐ開演です。


開演時間が10分過ぎてもまだ席についていない人が多数...


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一夜明けて...

なんと表現して良いのか良く分からない芝居でした。前衛演劇ってこんなもん?
テキストはいわゆる不条理もので、「1から6まで数えて、その次が7なのか8なのか分からなくなり、近所の人に尋ねてもみんな知らないという」とかの、昔NHKのFMラジオでやっていた「クロスオーバーイレブン」みたいな話が延々と続く。
話の内容はさておき、今回も照明技術が圧倒的に素晴らしかった。まっさらな舞台の背景に、そして小道具大道具にも映し出される鮮やかな色には、文字通り目が奪われました。
音楽と効果音も良かった。ほのぼのとした音楽が流れている途中で「ブチッ」と切れたり、カチンコのような「カァーン」という大きな音で場面が切り替わったり、あとはいかにも前衛だーという感じにさせてくれるノイズ音も、それほどしつこくなくてちょうどいいくらいでした。

そんなわけで、KiK的には感動はしなかったけれど、演出のシャープさに大いに感心した、というのが率直な感想です。

ちなみにバリシニコフは、ほんのちょっとステップを踏むぐらいの踊りしか見せてくれませんでしたが、それでも動きのしなやかさなどはさすがやなー、とホレボレしました。
アデル、ブルーは熱い色
今年のカンヌ映画祭で最高賞を受賞した「アデル、ブルーは熱い色」を見てきました。

女同士の生々しいセックスシーンもさることながら、主演女優がインタビューで撮影条件の劣悪さや監督の度を超えたしごきっぷりを暴露し、公開前から何かと話題を提供していた一作。それが功を奏して(?)、この種の映画にしては珍しく、現在フランスで大ヒット中であります。

本題に入る前に、この作品を生んだアブデラティフ・ケシシュ監督のこれまでの作品について一言。KiKはこの監督の映画が結構好きで、最近では数少なくなった、「この人の映画なら見に行こう」と思わせる監督の一人です。2作目の『身をかわして』では、みずみずしい少年少女たちのむき出しの感情を、時にユーモラスに、時に虚しさを交えて浮き彫りにし、続く『クスクス粒の秘密』では、念願のレストラン開店に向け奔走する初老の男を軸に、複雑に絡み合う人間模様から生まれる悲劇をじっくりと描いて、ともにセザール賞作品賞受賞も納得の秀作です。

KiKがこの人の映画で好きなところは、登場人物の息遣いや体温が伝わってきそうなほどのリアリズム。一歩間違えば単なる下品な覗き趣味になるスレスレのところをうまくフィルムに収めることができるのは、この人ならではの演出の腕だと思います。彼の前作 Vénus noire は、そんな覗き趣味が炸裂しつつも芸術品にまで昇華したと言う点で、KiKの大好きな映画なのですが、なにしろ19世紀初頭にアフリカからヨーロッパに連れてこられた黒人女性(サラ・バートマンという、実在した人物)が、見世物小屋で散々好奇の目にさらされ、珍しい物好きの上流社会で嬲りものにされ、最終的には極貧とアルコールに溺れて売春生活を余儀なくされるというストーリーなので、ヨーロッパの人にしてみればやっぱり過去の恥部を目の前に突きつけられているようで面白くなかったのでしょうか、評論家はほぼ無視、興行的にも失敗に終わりました。

前置きが長くなりましたが、早速『アデル』の話に移りましょう。正直なところ、見る前は少々不安でした。ビアンのカップルの惚れたの腫れたのという話でどうやったら3時間も持つのか?と。見終わって、本当にあっという間でした。欠伸一つも出ませんでした。アデルという女子高生が恋をして、好きな人と幸せな時間を過ごして、やがて関係に溝ができ、悩み、葛藤し、別れに至るという至極単純な話なのですが、一つ一つの場面の描写の丁寧さに驚きます。恋愛映画数あれど、ここまで「人を好きになること」というテーマとがっぷり四つに組んだ映画は珍しいのでは。アデルの場合は、恋した相手が女性だったために様々な困難を伴い、それがドラマチックな効果をアップさせている要因の一つでしょう。

ただ、だからといってこの映画を「レズビアン映画」とか、「同性愛映画」というふうに括ってしまうのはちょっと違うんじゃないか、と思います。アデルとその恋人エマとの間に起こることは、ヘテロのカップルにだって十分ありうることなのだから。 同性愛・異性愛という次元を超越した普遍的な恋愛の形、とでも言いましょうか。同性愛者のはしくれのKiKにはそう思えました。もちろん、同性愛者にはよく分かる、いわゆる「あるある」シーンも所々挿入されていて、個人的に楽しめた部分もありますが。

この映画を語る上で避けて通れないのが、例のセックスシーンでしょう。KiKは『クスクス粒の秘密』の終盤に出てくるベリーダンスのシーンを思い出しました。どちらもとにかくしつこい(笑)。見ているこっちが疲労困憊してしまうくらいですが、そんな気分になるのはやはり演出の凄さでしょう。とにかく見て、感じてくださいとしか言いようがありません。言葉では言い表せない、映像言語がここにあります。

ダラダラと思うまま書き続けてきたのでそろそろ切り上げようかと思いますが、最後に一つだけ。この映画ではすべてのシーンで主人公アデルが登場します。エリック・ロメール監督の映画でも、主役がすべてのシーンに登場する作品がいくつかありますね。観客を主人公に惹き付ける効果は大きいです。それに、アデルが国語の授業で使っているテキストはマリヴォー。ロメールの映画はしばしば「マリヴォー的」と評されることがあり、ロメール本人も好きな作家の一人にあげています。そんなわけで、『アデル』にはなんとなく、ロメール映画との接点があるような気がするのですが、気のせいかなぁ...
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